友人の友人が、自宅に、サウナを買ったそうです。
あの裸で入る暑い小部屋。あれを家に買ったのだとか。
しかもメルカリで…。
最初に聞いたときは、「なんでそんなモノを…」と呆れたものですが、深く聞くほどサウナを家に買うという行為が大正義であるように思えてきてしまう自分がいました。
今回はその人物の家を訪ねて、買ったサウナを楽しみながらお話をうかがってみることにします。
都内に住む30代男性・なつめぐさん(@natsumeg_k)です。
「家でもサウナに入りたいなと思ったんです」
narumi
初めまして。今日はよろしくお願いします。サウナ好きには2種類の人間がいるって言いますね。家にサウナを買う人と買わない人と。
なつめぐ
初めまして。そうですね。それで言うと僕は完全に買う側の人間です。普段からサウナが好きで、よく行ってましたし、家でもサウナに入りたいなと思うようになったのは自然な流れだったと思います。
前に家を探してるときに、いろんな都内の大きい家を見ていたら、サウナ付きの家があったんです。へー家にサウナってあるんだって。そこからですね、考え始めたのは。
なつめぐ
でもうちはそんなに大きな家ではないので、キッチンのスペースを潰してサウナを置いています。料理は一切しなくなりました。その代わりUber EATSをよく使うようになりました。
narumi
キッチンにサウナって異質な空間ですね。こういうサウナってどうやって探すんですか。
なつめぐ
普通にGoogleで検索してみたら、100万円とか200万円とか出てきて、「わあ、高いなぁ」って思いましたね。
僕の家にあるのも100万円くらい。まあピンキリなので正確に見てみないとわからないですけど。
なつめぐ
高いなぁ、困ったなぁって思って、そこで出てきたのが「メルカリ」ですね!
narumi
メルカリのサイトだけど、そういうのはいいですよ(笑)
なつめぐ
メルカリで調べたら、新品で100万円とか50万円するものが2万〜3万くらいでありました。1000円のものもあれば、同じものが12万円でソールドアウトしたりしてる。値段は本当にばらばら。ちなみに僕が買ったのは2万円でした。
narumi
安っ!サウナというものは中古でもいいんですか。
なつめぐ
多少は気にしました。メルカリは中の写真とかもたくさん掲載されているので、清潔感とかはチェックしました。
本文中にも「清潔感あり」みたいに書かれてるのを見たり。あとは出品者の評価がわかりやすいのはいいですね。
で、これがサウナの面白いところなんですが。ほとんどのサウナは「取りに来てくれる方限定」とかで売ってるんです。
narumi
大きめの家具だとよく見かけますよね。サウナはほとんどそういう売り方になっていると。
なつめぐ
うん。その中でも一番きれいで安くて近かったのが静岡の出品者さんだったんです。
narumi
100万円のサウナが…。
なつめぐ
2万円。98パーセントオフ。
メルカリで“サウナを売る人”の苦悩とは…
narumi
なんでそんなに安く出品されてたんでしょうね。
なつめぐ
これもすごく面白い特徴があって。何名かの方とメッセージでやり取りさせていただいたんですが、皆さん同じだったのが、ご家族のなかでお父さんが購入したけど、もういらなくなってしまったというストーリーです。
10年とか20年落ちくらいの型が主流で、おそらく30代後半の働き盛りだったお父さんがサウナが好きで購入したんでしょうね。
だけど10年・20年経ってだんだん入らなくなってきた、と。重さは20〜30キロあるからもう家族の誰も運ぶことができない。そして廃棄するにもすごくお金がかかる。そして配送しようにも、特別な家具みたいな扱いになってしまうので、すごく高い。
narumi
これを運ぶとなると高いですよね、絶対。
なつめぐ
めっちゃ高い。で、どうしようもなく自宅の奥の方で埃をかぶって眠ってる。ぶっちゃけタダでいいから誰かに譲りたい。皆さん同じ状況でした。
narumi
もしかしたら20年くらい前にもサウナブームがあったのかもしれないですね。「自宅でサウナを!」みたいな売り出し方で、当時の働き盛りの年齢の人が買って…。
なつめぐ
あとはたぶん戸建てを買ったタイミングの人が、同時にサウナも買っちゃおうか、みたいな。
で、10年〜20年経って、これいらなくね?と(笑)
narumi
そんなサウナがいま日本にゴロゴロしてるわけですね。
なつめぐ
だと思います。僕が友人と一緒にトラックで静岡までサウナを引き取りに行ったときのことなんですけど、すごくきれいな大きいお家で、お母さんと娘さんと、本当に生まれたばかりの赤ちゃんがいました。
みんな出てきて、これなんですよ、と。「家の中から出せなくて困ってました」って。お茶ももらってお菓子ももらって、これは良いサウナですね〜みたいな話をして、サウナを荷台に積んで帰りました。
narumi
天使に見えたでしょうね。
なつめぐ
お金はくれるわ、不要なサウナを持っていってくれるわ。
僕らは「ありがとうございます」って感謝されて、いまはサウナで快適になっている。それはすごくほっこりエピソードでした。
朝起きたら、サウナのスイッチを入れて二度寝
narumi
初めて自宅でサウナに入ってみて、どうでした。
なつめぐ
最高でした(笑) やっぱりいざサウナに入ろうって思ったときに、24時間、夜中でも早朝でもすぐに入れるのはすごくいいですね。
今までは家の近くの銭湯に歩いていってたんですけど、それでも0時くらいには閉まっちゃいますし、たとえばテルマー湯みたいな深夜営業の大きな銭湯に行こうとするとけっこう高かったりするので。
narumi
深夜料金がかかりますからね。サウナ本体が2万円なら毎日入ってるうちにすぐ元が取れそうですね。サウナがある暮らしっていうのは、実際どんな感じですか。
なつめぐ
冬は朝起きてサウナのスイッチをオンにして、ベッドでゴロゴロしながらサウナが温まるのを待つ。温まったらお風呂に軽く入って、サウナに入って、またお風呂に入って…これを繰り返します
特に冬はいいですよ。20分くらいで温まります。スイッチを入れたら、一旦ベッドでゴロゴロしてから戻るとちょうどいい。
夏も入ってます。夜、仕事から帰ってきて疲れたときに、これから銭湯に行くのも大変。そんなときにちょっとサウナでリフレッシュ。これはもう最高です。
narumi
サウナの良さって結局、何でしょう。全然入らない人もいるわけですが。
なつめぐ
肉体的には汗をかいてリフレッシュすることができます。普段そこまで運動とかしないので、手軽にできるリフレッシュになっています。ただ、それよりもよく「心が整う」と言いますよね。
スマートフォンを常に持ち歩いてしまう現代の暮らしの中、スマホを持ち込めない、しかも密閉された空間で、ひたすら自分と向き合う時間が得られるわけです。
いまの時代、タバコを吸ってても、トイレに行ってても皆スマホを持ってるじゃないですか。スマホが強制的に使えない時間があるだけで、ちょっと心が安らぎますね。
需給バランスが「モノ」に新しい価値を与える
narumi
デジタルデトックスの場にもなっていると。自分の家のサウナだと、中で本を読んだりもしていいわけですよね。
なつめぐ
うん。めっちゃ読書してます。
もうサウナの中じゃないと集中して本が読めないんですよね。
narumi
あとはiPadとかを持ち込んでNetflix見るのも良さそう。
なつめぐ
それもいいですよね。さっきスマホ類は持ち込まないっていう話をしたばかりですけどね。っていうか暑さで壊れそう。
ちょっと話は逸れますが、メルカリでサウナを売っているのを見つけたときに、すごく高いものが安く買えたりする“掘り出し物感”というか、そんなのが売ってるんだ…っていう驚きや面白さは、買ってる最中にすごくありましたね。
誰かにとっては不用品だけど、別の人にとっては価値がある。その逆もあるわけですし。
narumi
そのバランスをうまく利用すると…。
なつめぐ
こういうことになるんですよね。98%オフになるし、みんながハッピーになる。
この偏りをならすだけで、すごく世の中が良くなるんですよね。
そこが今回の買い物の一番の価値だなと思いました。だから皆さんも新品で購入する前に一度、何か欲しいものがあったら「それは誰かにとって不用品ではないか?」と考えてみるのもいいかもしれません。
narumi
最後に、サウナが家にやってきて最も変わったことって何ですか。
なつめぐ
キッチンが使えなくなっちゃったことですね!
誰か引き取りに来てくれる人を募集してます。
(編集/メルカリマガジン編集部、写真/鳴海淳義)